日本アクションラーニング協会
         
 

第5回 アクションラーニング事例研究会 レポート

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去る2007年6月15日(金)、東京・丸ビルにてメンバーズ事例研究会をセミオープン開催しました。

今回のテーマは、企業内のリーダーシップ開発。
メンバーズのアクションラーニング(以下、AL)コーチが自社内で展開中の導入プログラムを紹介しました。

当日は、メンバーズ会員の他、大手メーカーや製薬会社、IT関連の人材開発担当者、シンクタンク、研修会社、大学など多方面にわたる方々に参加いただきました。

「企業内のリーダーシップ開発」
日本アクションラーニング協会 代表 清宮普美代

ALにおけるリーダーシップ開発では、現場のリーダーが他に影響を及ぼすという効果に焦点が当たっています。リーダーシップ開発というと、企業ビジョンなど大きな絵を描くようなスキルやロジカルシンキング力など個人能力の開発を連想しがちですが、ALではチームの力を促進するリーダーを育成します。個人能力の開発だけでは組織力の向上にはなかなか結びつくことが難しい。そこで、このチーム学習を促進するALコーチの存在が必要となります。私どもでは、自己のみならず周囲の行動や考え方を変えるスキルを兼ね備えたALコーチを「変革エージェント」とも称しています。

ALが組織開発に利用される理由は、このチーム学習を形成しやすい点に集約されます。ALコーチが運営するセッションでは対話を生み出し、チーム学習の場を形成します。チーム学習を形成しやすいツールと仕組みをもつのがマーコードモデルのALであり、チームメンバーのモチベーションや生産性を上げて元気な組織を生み出していきます。

本日紹介する日本ベーリンガーインゲルハイムの事例では、問題解決とチームリーダー養成に力点が置かれています。アクサ生命保険の事例は、組織内コア人材を軸として学習サイクルを組織内に伝播しながら組織文化変容の定着を目的としています。

新エリアマネージャー研修
〜チーム課題解決プロジェクトと支援型リーダーシップ養成〜
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 
営業統括本部 統括部長 早川勝夫

少しだけ弊社の紹介をさせていただくと、ドイツに本社があり主に医科向け製薬の輸入、製造、販売を行っております。1961年に設立し、現在、1600名程度の社員が在籍しており、業界では世界規模でみて売上高15位の企業です。

製薬業界での営業部員であるMRの生産性を高めるための人材育成プロジェクトの一環として、ALを採り入れています。MRの生産性とは、MR1人当たりどれだけ医師への訪問しsalesを上げることができたかということす。MRの生産性を因数分解すると、訪問の量、訪問の質、宣伝の質の3つにわけられると私どもでは考えます。MRが訪問して、医師にいかに認知され、効果的な宣伝によって処方してもらえるか。処方して初めて購買につながるため、製薬業界ではテレビCM等の宣伝よりも人海戦術が基盤となります。

全国にドクターは28万人、対してMRは5万5千人、ドクターにマーケティングを行っているMSも2万3千人いると言われています。ざっと計算すると、一日にドクターが営業を受ける回数は4回強となり、それほど競争の激しい現場です。 ALは2005年から導入していますが、この生産性向上のプロジェクトは、過去の失敗体験から学びトップダウン型で始めました。プロジェクトの効果や効率を考慮したときに、初めはある一定の方向性を示したほうが組織の転換が早いと考えたからです。

MRの活動は日々、成功と失敗の繰り返しであるため、この問題をチームで共有し解決することで「学びの組織」へと変換できるいい方法はないかと模索していたときに、GEのワークアウトを知り、ALにたどり着きました。

現在は、ALの本格導入の前のパイロットスタディの初期段階で新営業マネージャーを対象にプログラムを展開しています。

本段階での検証項目としては、
 1.多忙な営業が現場で実行できるのか?
 2.問題点や課題点の抽出は可能なのか?
 3.課題解決は可能か?
の3つがあります。

次のパイロットスタディでは1支店でのマネージャーを対象にALを展開する予定です。

現行のプログラム対象者である新営業マネージャーにALを通して求めたのは、チームでの問題解決とチームビルディング、支援型リーダーシップの醸成です。4ヶ月にわたるプログラムの中で研修は5日間。AL手法の習得やリフレクションを中心に学ぶ講義と講座内のセッションとともに、各現場にもどったマネージャーはチームプロジェクトワークを設定します。ネット上のツールや最終日のパフォーマンス審査も組み込んでいます。

昨年からスタートした研修プログラムですが、昨年と今年ではALセッションと各マネージャーの現場との融合を目的として、セッション内の問題やアクションプラン作成の時間配分に変更点を加えました。 昨年、プログラムに参加したマネージャーを対象に、研修終了して半年経過したころアンケート調査を行いました。驚いたのは、全員が研修後もALを継続していて、成果もあったとの回答があったことでした。具体的な成果としては、チームビルディングに関する項目が上位で問題解決、質問のスキル、リーダーシップがあげられていました。

本日は、現行のプログラムに参加中のマネージャーからの声を映像で紹介します。

 −ビデオ放映−

次のパイロットスタディケースでは、知恵の再構築、チームの再構築を行いながらトップダウン型からボトムアップ型へと移行できたらと願っています。ボトムアップ型への転換が更なる営業の生産性を上げる契機となると考えています。

CS行動定着
〜新世代型リーダー育成と行動変革〜
アクサ生命保険株式会社
ガバナンス&プランニング部 部長 伊藤洋志

私が中心となって取り組んでいる自社内のリーダー育成<変革エージェント研修>プログラムについてお話します。今回紹介するのは、本社の10部門のひとつ、カスタマーサービス部門で行っているプログラムです。同部門には、約400名のスタッフが在籍し女性が約85%を占めています。

変革エージェント研修では、「CS意識醸成とCS行動定着」と「ALコーチの養成」を目標として学習する組織の構築を目指しています。講義、演習、体験学習を通じてさまざまな知識やスキルを得るとともに、プロジェクトを通じての行動定着を図っています。「知っている」から「使える」レベルへ、さらに「成果が出せる」レベルに導く“やりっぱなし”にしない研修となるようデザインしました。

研修に参加したメンバーを我々は「変革エージェント」と呼びます。変革エージェントは、自分の部署でCS意識の醸成や行動の定着、プロジェクトの遂行、ALを通じた学習する組織の推進、AXA(アクサ)理念の浸透など、さまざまな責務を背負っています。 このメンバーは、社内で自発募集を行いました。期間は4ヵ月半で、研修事務局に5名を配置しました。

研修プログラムの構造ですが、ALは、パソコンに例えると傾聴力やチームビルディング、行動力や俯瞰力などオペレーションシステム(OS)として機能する役目を果たします。構造を強化するアプリケーションとして、CSの意識醸成や風土を定着させるプログラムと世代と部署を超えたメンバーで行うミニワークアウトなどCS関連のプロジェクトをはしらせています。また、研修効果の「見える化」を目的としたツールも活用して、自己開示をしてメンバーが書き込みを行い、それに対してフィードバックを行います。

いまでは、研修は二期目に入っていますがここまでたどり着くには様々なハードルがありました。2005年当時、Fish哲学を利用した200名の階層別研修を行いCSの土壌を耕しました。その後、いろいろと調べている内に「学習する組織」を目にすることが多くなり、私自身が協会のALコーチ養成講座に参加しシニア講座へと進みました。しかし、私の立場でメンバーを集めるとセッションは行えるが、真の意味での自律型人材は育たない、うまく機能しない。そんなとき、役員から「スタッフには発想の転換力がない」という不満の声がでました。既に何度かALセッションを体験した社内のメンバーに集まってもらい、役員を含めてALセッションを敢行しました。ALセッションでその問題が再定義され新たな問題が抽出され、役員からの承認を得て今回の研修プログラムを計画できるようになったのです。このほか、現業の多忙さから研修時間を夕方以降に徹底して現場の理解を得たり、人材育成の必要性を繰り返し唱え説明を行ったりしてハードルを乗り越えています。

レベルの高いCSでは、マニュアルで固められたサービスではなく、自分で考えて行動を起こす自律型人材が求められます。その点で、ALが必要なのです。ALの書籍に、「メンバーには無限の可能性がある」「メンバーには自分で成長する力がる」という私の好きな一節があります。ALとCSの親和性を位置づける言葉だと思います。

研修開始前には、管理職や現場マネージャーに向けてプログラム説明会を複数行い、参加メンバーの応募を募りました。公開説明会も経て、参加者を選定。全7日間の研修最終日に大阪のリッツカールトンの人事部長を講師とした研修で第一期生のプログラムは修了。若い参加者もいるため周囲を巻き込むリーダーシップへのサポートが必要であることなど、一期の反省を踏まえて二期生のプログラムを現在おこなっています。

「変革エージェント」を中心としたALの伝播は実質約70名が取り組んでいるので、部門スタッフ400名の20%を超えると臨界点に達し爆発的に広がる可能性があるとみています。今後の展開として、第一期生のサポートをおこないつつコミュニティー活動やミニワークアウトの受皿制度の実施、社内の人事制度部門イントラに活動報告を掲載などで社内の理解を得る活動を続けていきます。AXAは本社がフランスにあるため人事研修となると本国からくることが多いですが、日本発の研修が発信できたらと願っています。