日本アクションラーニング協会
         
 

事例研究会レポート

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10月19日(木)18:30より東京・丸ビル コンファレンススクエアルームにて「第4回アクションラーニング事例研究会 〜教育現場におけるアクションラーニング〜」を開催いたしました。

今回は教育現場におけるアクションラーニング(AL)に焦点を絞り、GIALメンバーズ会員の中から実際に教育現場でAL活動を重ねる実践者より活用事例の発表を行っていただきました。

会場にはGIALメンバーズのみならず多数の教育関係者がご参加になり、どういう風にALを自組織に展開できるのか、を探っておられました。

ご挨拶
清宮 普美代(GIALジャパン 代表)

本日は沢山の皆様にお集まりいただき有難うございます。
もともと本研究会はGIALメンバーズ会員限定で定期的に行う活動の一環ですが、事例発表会はより広くALを知っていただく機会として、本日のように定期的にセミオープン開催しています。

今日、事例を発表いただく方もGIALメンバーズ会員のALコーチとなります。GIALメンバーズとは、弊社のALコーチ養成講座を受講された認定ALコーチで構成される会員です。GIALジャパンでは、継続的なAL研鑽を積む場としてメンバーズの皆様に研究会や発表の場を提供しています。

近年、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」とは
1.アクション:前に踏み出す力
2.ラーニング:考える力、変革する力
3.チーム:チームで働く力
の3「力」で構成されています。

これらは、まさにALがもつ特有の効果でもありALそのものが教育現場で注目を浴びている趨勢を感じます。ALのコアとなるALセッションを少し説明すると、1時間の会議セッションを核に、質問形式だけで提示された問題の"真の問題"を明確にしていきます。
GIALメソッドのALは、こういう風にとてもシンプルですが複雑な問題の解決や自律型チーム、リーダーシップの育成に貢献し、「学習する組織」のエンジンとも形容されています。

このALが具体的にどうやって現場で活用されているのか。まず小林先生にお話いただきます。

事例発表 「学校教育現場におけるALアプローチ」
埼玉県立岩槻高等学校教諭 
小林 昭文さん

まず、私の自己紹介から簡単に行わせていただきます。学生時代は物理学を専攻しており、35歳で教師となり現在に至ります。現在はカウンセリングやキャリア教育に力をいれており、リクルート社とともにワークシートを使用した進路指導の開発を行っています。

以前は個別指導をおこなっていましたが、グループ指導で何かよい方法はないかと模索していたところALに出会いました。当時、生徒と個別に対面してみるといろんな意味で生徒は傷ついていることが分かりました。

生徒たちに実際にALを体験した後の感想を聞いてみると「自分の意見が言えて楽しかった」というのです。実際は、意見ではなく質問オンリーでALセッションを行っているのですが、質問のみで進められるセッションでは、自分の発言(質問)に対して否定的な反応がないために「安全な場」であることを生徒自身が実感し自由に質問をすること自体が発言をしているのと同じ感覚になっているのです。

これは私にとっても新たな気付きでした。また、1時間で具体的な行動計画がでてきたことで、問題提示をした本人も質問をした他の生徒も喜び、温かく実践的なチームワーク力が形成されやすい点がALに注目した理由でした。

生徒へのAL実践を重ねていくと、問題そのものより内面的なところへ問題が再定義される場面が多々あります。今抱えている問題よりも、問題提示者自身が人に依存しすぎていて自分でやりたいことが明確化されていなかった、ということに気付き、行動計画が生まれます。振り返り(リフレクション)がおこると行動計画を実行に移すのはとても早い。ある生徒は、セッションが終わってすぐ問題解決に必要な情報収集を始めました。

教員へのAL実践事例もあります。現在、養護教諭の2人配置制度が拡大しており各学校で人間関係などのトラブルが発生しています。

転任になった養護教諭が転任先のもとの養護教諭とうまくいかないケースがとある学校でありました。問題提示者である本人は自分が看護資格をもっていない(一方は資格保持者)ことが問題だ!という問題定義に陥りそうになっていましたが、セッションメンバーの一人の質問により新たな気付きがうまれ、問題の再々定義で「コミュニケーション不足が要因」であることが本人から提示され、行動計画も生まれたのでした。その時のチームメンバーも少々過熱気味になっていた同教諭が平和的解決に導くことが出来たことに大きな喜びと充足感を感じていました。

また別の教諭が抱えていた停滞気味のプロジェクトチームにもALを採用し、ALセッション後にはチームが翌週から動き始めて同プロジェクトは現在も進行中です。

このように、ALは生徒にとっては発言をするコミュニケーションを高める場となり自発的な行動を促す原点となる。教員にとってALは、指示やアドバイスをしてしまいがちな教員は生徒の自主性や主体性を奪うことなく「教師が見守る」ファシリテーターの体験が出来るのです。

今後も自分自身がALコーチとしてのスキルを磨きながら、キャリア教育やコミュニケーション教育の中にALをうまくとりいれる活動を幅広く展開していきたいと思っています。

事例発表 「学校変革プロジェクト」
イノベーションアソシエイツ株式会社
代表取締役CEO 河北 隆子さん / 代表取締役COO 脇 經郎さん

イノベーションアソシエイツは、組織の才能、組織の活力を引き出しそして組織の変革を導く支援として、コンサルティングやマネ-ジメント強化を目的としたプログラムを様々な産業に提供しています。

アクションラーニング(AL)とは2003年に出会い、GIALメソッドのALをコンサルティングのプロセスに取り入れた組織風土変革に取り組んでいます。これからお話しする学校教育にも取り組んでいますが、持論として、学校は何も"特別な場"ではなく社会の基本機能だと我々はとらえています。

本日お話しする愛知県小牧市立応時中学校での実践は弊社の書籍をご覧になった校長よりアプローチがあったことに端を発します。当時のニーズとして、バラツキのある教師力の向上や多忙な時間での改善に取り組めない現況からの脱却、教師間の一体感、保護者や地域との関係整備、文部科学省の要求達成など多岐にわたっていました。

弊社は早速ヒアリングを行い、個人能力への依存、ビジョン・方向性の相違などその潜在的課題をわりだしました。文部省指定の学力向上スクールとして人間関係に注力し南山大学のラボラトリーメソッドなど教育プログラムの導入も積極的におこなっていた同校ですが、生徒指導に活用されるのみで教師同士には十分に機能していなかったことがわかりました。


個人能力の向上までで組織力を高めるところまでには至っていない現状が見えました。
多忙な業務に終われ限られた時間の中で成果を生み出す手法としてALを活用したプログラムを導入し、「学習と成長」のプロセスを日常のなかに組み込ませるプログラム設計を考案しました。

公立学校は残業や土日出勤不可など時間のない中で様々なプロジェクトを抱えていて時間がなく共通認識がとりにくい場所ともいえます。そこで、すべての教員をこのプログラムに導入はできないため、各責任者の能力をあげていくことに注力した設計をしました。

ALセッションで提示される問題は、日常的な問題が複雑にからみあっていることが多いものです。ALセッションで解決策が導かれることで、メンバーの自信につながりチーム力、組織力が高まっていく過程が分かりました。日常的な問題に対処し、徐々に変化をしていくことで自分たちの力で変わっていくことができるんだと自信になった、といいます。

活動を通して、ビジョンの構築やそのビジョンを意識したイベント行事の構築、マネ-ジメント層へのALの活用、保護者説明会の改善など具体的な成果もだすことが出来ました。

サッカー部の顧問教諭は、部員にALセッションを行い練習をしてもなかなか強いチームにならない、といった問題提示に対して、問題は勝利に対する意欲が足りない、ことが振り返り(リフレクション)でわかり、その後、市の大会で優勝するまでになったとのストーリーもあります。

参加メンバーがALを通して、個人とチームメンバーが「学習と成長」を体験し、日常の中に
個人やチームとしての「あり方」を独自に応用した点にALの大きな有効性があると感じました。